Special2

EPISODE 03

可能性がある限り、
ハードルは下げない

ハンディキューブ®開発プロジェクト

山本 光

包材製品開発部

山本 光

2007年入社
総合理工学研究科 物質電子科学専攻修了

大学院で電気化学を学んでいた山本光だが、「手に取れる製品を開発したい」との想いから、就職活動はパッケージの開発・製造を行うメーカーを中心に進めていた。なかでも共同印刷は、人を大切にする雰囲気と若手がチャレンジできそうだと感じて入社を決意した。
入社後は一貫してパッケージ開発の仕事に就く。最初は、乾燥剤を使わずにパッケージ内部を低湿度環境に保つことができる「モイストキャッチ®」に携わり、医薬用包材への応用展開を4年間担当。その後、インスタント焼きそばのお湯を安全に切れるフタ材「パーシャルオープン」の関連技術や、チューブの継ぎ目にも印刷できる「フルプリント®ラミネートチューブ」の開発などに5年間携わった。そして担当したのが、中容量フレキシブルコンテナー「ハンディキューブ®」の開発だ。
新人時代には「すごく高価な材料同士をミキサーでブレンドする作業で、ミキサーの排出口を閉じたかを確認せずに材料を投入してスイッチON。排出口からあふれ出る高価な材料を見て、思わず『わーーーッ』と大声で叫んだ」というエピソードを持つ。いくつもの失敗を乗り越え、年次を重ねるにつれ、プロジェクト全体に目や気を配り、進捗を把握できるようになった。その山本が今までのキャリアを通して最も心に残っている仕事が、ハンディキューブ®の開発だ。

ありそうでなかったもの。

HANDY CUBE ハンディキューブ

ありそうでなかったもの。
ハンディキューブ®は正にそういうものだ。例えば災害時、ライフラインが止まったときに、まず必要なのが「水」。しかし、容器がなければ運べない。こんなとき、ハンディキューブ®はうってつけだ。使う前と使った後は小さく折りたためてコンパクトだが、使用時には持ち運びやすい、フィルムでつくられた容器。用途は災害時ばかりではない。食品から化学用品まで各種用途に使用でき、液体から顆粒物まで対応する。容量は5Lと10Lだ。本体の天地2カ所に持ち手があるため、持ち運びや内容物を注ぐのに扱いやすい。また、立方体で輸送効率がよく、廃棄性にも優れている。さらに、デザイン性、経済性も考慮されている。
開発したのは、包材製品開発部の山本がリーダーを務めるグループ。途方もない苦労の連続で生まれた容器だった。開発の物語を見ていこう。

chapter1

生みの苦しみ

「これだ!」

米国で開催されたパッケージの展示会を視察したグループが、最新の包装形態の情報を持ち帰ってきた。そのなかで特に注目を集めたのが、ハンディキューブ®の前身となる「PacXpert™ packaging technology (以下、PacXpert™)」。液体用のパッケージには、これまでダンボールなどを使用したものはあったが性能面などで納得のいくものではなかった。この「PacXpert™」は上下に取っ手のついたスタンドパウチで、形状、大容量、持ち運びの性能、材質、どれもが理想的なものだった。
「次世代の液体用パッケージはこれだ!」―営業部門が主体となり、すぐに導入が決定。2014年に、米国のダウ・ケミカル社と「PacXpert™」のサブライセンス契約を締結し、名称も機能と使いやすさや形態をイメージしやすい「ハンディキューブ®」へ変更した。
山本は、このハンディキューブ®の開発テーマリーダーに任命された。「大型パウチ製造について全く知見がなかったため、海外で開催されていたダウ・ケミカル社主催の製造ライン見学会やライセンシー同士の情報共有・勉強会などにも積極的に参加して、開発・製造ノウハウを構築していきました」。トライアンドエラーの連続のなか、山本は日本国内のユーザーに合うようにフィルムの仕様を変更し、製造条件の検討を進めていった。

chapter2

難題「20万回の挑戦」

難しかったのは、安全性の担保と底上げだった。ハンディキューブ®は包装形態がユニークなため、合致する品質規格がない。さまざまな包装調査や業界関係者に話を聞いて知見を集め、独自に規格を構築していかなければならなかった。製造装置についても開発から手探り状態。国内のお客さまに納得いただくには、フィルムの構成、袋の形状、加工条件を見直して改良を重ねなければならない。一つひとつ試していった。 例えば、落下試験。水を詰めた袋を落下させる。開発当初はたった1回の落下で袋が大きく裂けて全身がずぶ濡れになることもあった。それでも、ひたすら実験と失敗を繰り返した。「落下試験は、累計20万回近くに及ぶと思います。実験して、製法を見直して、改良を続けました」
さらに、袋の天地にある取っ手は、子どもからお年寄りまで、取り扱いの際に手が痛くならないようにしなければならない。どうしたらよいのかを、実際に使う人の立場で調べ、設計に反映するなどし、当社独自の改良を加え、ハンディキューブ®を作りあげていった。

ブレークスルー

可能性を信じ、諦めない

山本は、「このプロジェクトで試されたのは、技術者としての根性」だと言う。試作と落下試験を繰り返し、それでも破袋してNGがゼロにならない。「規格を見直し、ハードルを下げようという声があがりました。しかし、落としても破れないものがある以上、可能性を信じたい。ハードルを下げずに不具合の検証を進めることにしました」
原点に立ち返って、フィルム構成の見直しや袋の加工方法など、考え得るファクターをすべて洗い出し、片っ端から検証を続けていった。そして、努力が報われる日がやってくる。神さまが山本の執念に根負けしたのだろう。
「製袋工程の、ある加工ポイントを調整することでNG発生率が制御できることがわかりました。これがブレークスルーとなり、ここから一気にバリエーション製品の開発も前進しました」  解決の糸口を見出すまで1年半。山本は可能性を信じて固い扉に挑み続け、そして遂にこじ開けた。もちろんその間、落下試験だけを行っていたわけではないが、山本はこのプロジェクトを通じて技術者として自信をつかんだという。
 現在の仕事はハンディキューブ®専用のフィルム開発から、製造設備の仕様決定、検査方法・装置の導入、製造ラインの構築など広範にわたる。社内だけでなく社外の協力会社とも連携しながら開発を進める日々だ。
お客さまからは「使いやすい」「思ったより丈夫だ」という声を頂けるようになった。苦労の甲斐があった。今、山本の毎日は充実している。
共同印刷には、諦めの悪い技術者がいる。
扉の向こうに行こうと挑み続け、もがき続ける者は、かっこいい。
    ※® ™ : ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー商標
但し、「ハンディキューブ®」「モイストキャッチ®」「フルプリント®ラミネートチューブ」は共同印刷の商標です。

chapter3

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