共同印刷グループ コーポレートレポート2023
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3 共同印刷グループが創業から126年もの長い月日に渡って事業を継続できたのは、社会に寄り添い、期待に応え続けてきた結果であると考えています。しかしながら、近年の経営環境は非常に厳しいものでした。紙の印刷物の減少に加え、足元ではウクライナやイスラエルで勃発する軍事侵攻による世界経済への影響、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンでの部品や原材料調達の大きな混乱、そして新型コロナウイルスによるパンデミックなど、それ以前の数十年の間に生じた社会や経済の変化がわずか数年間に凝集したかのような状況であると実感しています。国家や経済全体がかつて経験したことのないリスクを抱える中、企業も先読みのできない市場で事業を行っていかなければならず、経営的には難しい舵とりを迫られているのが現状です。 国内に目を向けると、人口動態による社会構造や経済構造の変化は人々の考え方にも大きく影響を与えています。少子高齢化社会への移行や、多様な価値観や行動様式の変容が進み、自分の時間を大事にし、環境や人権、平等に対して高い意識を持つ人が増えることによって、私たちのビジネス環境にも大きな影響を及ぼしています。 当グループが今後も持続的に成長し、存続していくには、現在の厳しい経営環境に機敏に反応できる経営が不可欠です。当面の課題である原材料や物流費の値上げ分はサプライチェーン全体で価格転嫁を進めるとともに、環境問題を解決するサステナブルな製品やサービスの開発を急ぐなど、足元の課題は山積しています。また長期的な観点でも、旧来の価値観のままの組織運営を行っていたのでは、成長どころか存続すらも危ぶまれます。今の社員の多様性と新しい価値観を最大限発揮できる組織の仕組みを考えて、強靭な体制につくり変えていかなければなりません。 このような一連の変化は大きなリスクである反面、チャンスであるとも感じています。これを機に、経営層主導で持続的な成長を遂げる企業グループへの変革に取り組んでいます。中期経営計画 2022年度の業績は、全体としてはコロナ禍の影響が色濃く残り、苦戦を強いられた一年となり、人の流動性低財務戦略事業戦略サステナビリティ下が続いたことで交通系事業は減収となりました。一方の店頭販促をはじめとする一般商業印刷が増加し、データプリントを含むBPOなどのアウトソーシング事業や食品向け包装材関連も前期を上回り、全体としては増収となりました。ただ、売上高は伸長したものの、エネルギー価格の想定を超えた上昇に加え、材料費高騰に対する価格転嫁が一部にとどまったこともあり、営業利益は前期並みとなりました。2023年度は初頭から各市場、事業ともに急速に回復しているため、引き続き価格転嫁なども進めることで、収益面での回復が期待できると予測しています。 総括としては、既存事業の足元の課題に対処するとともに、加速度的に進む環境変化に応じた事業改革に待ったなしで取り組んだ一年でもありました。企業の平均寿命を見ると、最長の製造業界で35年足らずといわれている中で、共同印刷グループは、すでに127年目を迎えています。時代の変化に対応し、お客さまに価値を提供し続けることができたのは、ステークホルダーの皆さまと自社の先人たちの努力の結果であります。そして、今の私たちに課せられているのは、次の成長に向けた事業ポートフォリオの組み替えという大改革です。企業改革とは本質的には風土改革であり、意識改革であると私は考えています。これまでの過去に捕らわれない、柔軟で革新的な企業グループへと変貌を遂げていくにあたり、意識を根本から変えるために必要となるのが長期的な会社のイメージやありたい姿です。かつては、当グループでは積み上げ方式による3ヵ年の中期経営計画をもとにした事業戦略を立てていましたが、現中期経営計画では、10年後のありたい姿を描いた長期戦略を立案し、バックキャスティング方式で中期経営計画への落とし込みを行っています。10年後にこうでありたいのであれば、今何をするか、どう投資するか、3年後までに何をすべきかといった観点でアクションを決めていく、そのような意識を社員全員が共有できる体制をめざして変革に向けた取り組みを進めています。 当グループの事業は、長らく情報系と生活・産業資材系の2本柱で成り立ってきました。2000年以降、デジタルシフトが加速的に進み、紙に印刷するという従来の印刷事業は、年々減少を続けています。では今後、印刷はガバナンスデータ集2022年度の共同印刷グループの取り組み事業環境の変化を飛躍のステップに印刷の概念の変化と拡がり

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