49に伴って、新しい事業の開発、事業ポートフォリオの見直しが急務であるという問題があり、それを現場が強く感じているという事もあります。このような状況の中、今の取締役会の一番髙岡:本社建て替えが始まった2019年あたりから、企業風土改革の機運は高まってきました。風土改革においては、独立役員で構成する独立役員会の役割が非常に重要だと感じて自主的に会議を増やし検討を重ねました。 今までと同じことをしていたら10年後は会社がないかもしれない、どの会社もそういう危機感をもつべきですし、新しいことにチャレンジするカルチャーを醸成してほしい。しかし、いくら口でそう唱えても、企業組織というものがなかなか変わらないことは私たちもわかっていますので、独立役員会で話し合い保守的なカルチャーを変革すべく「360度評価(マネジメント診断)」や「さん付け運動」などの具体策を取締役会に提案してきました。もう一つ、独立役員会発案の施策が「ビジネスコンテスト」ですね。新規事業立ち上げとポートフォリオ変革は喫緊の課題であり、その危機感は経営層だけでなく、若手が特に強く持っているので、そこから発案してもらおうという企画です。共同印刷には技術開発の力もあります。初回は予想を超える126件の応募があり、その中から4件が事業化の検討髙岡:私は経営学の教授をしていますので、経営全般から見てもっとも目に付いたのが資本コストについての考え方です。これこそが、日本の会社がこの30年間成長しなかった要因となっているのではないでしょうか。会社は、株主の出資金と銀行からの借入金をもとに事業を展開して収益を上げなくてはなりません。銀行からの借入れには利息を払いますから資金調達にかかるコストが明確ですが、当然、株式の発行による資金調達にも資本コストがかかっています。ですから会社は毎年、資本コストを上回るリターンを出さなければいけません。しかし、日本は超低金利下で20年以上もやってきたものですから、資本コスト以上の収益を稼ぐという意識が薄い企業が非常に多いという現状があります。もちろん共同印刷もそのような企業の一つでした。 例えば、5年間で100億円の■けを出すために投資をする場合、1年目に5億円、2年目15億円、3年目25億円といった具合に収支計画を立てます。それにもとづき投資の可否を判断して投資したものの、実際は1年目に5億円といっていたものが2億円しか稼げず、2年目は15億円のはずが8億円しか稼げないというケースがあります。その場合でも、何年後かに事業計画の中期経営計画財務戦略事業戦略サステナビリティの課題は、持続的な成長をどのように描き、それを達成するにはどのような事業ポートフォリオが望ましいのか、そこをより具体的に示していくことだと思います。に入りました。内藤:私は、昭和の時代から重い体質を持つ会社の経営を複数、経験し、企業改革や事業再編で大いに苦労してきました。その時のトライ・アンド・エラーの感覚が肌身に残っています。普通に考えたら皆が「できない」と言うことをやる。社員一人ひとりが自分を変えていこうと、熱いパッションや野性味をもって、変化に挑戦して戦っていくべきです。それをしなければ会社は変わっていかないと思うのです。そうした経験をできる限り今の共同印刷にお伝えできればと思っています。光定:共同印刷の場合、従業員数が単体で約1,900名という企業規模があり、3つの事業本部の壁が出来上がっている「縦割り」が強いことが特徴的で、全社的な変革が進みにくい土壌があります。一方、私たち社外役員には各本部の皆さんもフランクに実情を話してくれていますから、これからはスタートアップ企業のように小規模で新しい会社のような感覚を持ち、部門の壁を崩した平場の議論で新しいものをつくっていかなければならないと私は思います。遅れを取り戻して、10年後にトータルで100億円の収益に到達したからそれでいい、よくがんばったといった考え方をする日本企業が多いのです。しかし実際は1年目に稼ぐ5億円と3年目に稼ぐ5億円は違います。その違いを無視する感覚は非常に良くありません。 そこで、共同印刷にも資本コストを正確に計算した上でそれを事業別評価やポートフォリオ管理に活かしてもらうために、ROIC(投下資本利益率)という指標を導入しました。過去のデータ集ガバナンス強固に築かれた既成概念を打ち破る、組織改革の重要性資本コストを意識して、稼ぐ力を身につける
元のページ ../index.html#51