共同印刷グループ コーポレートレポート2024
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共同印刷グループ コーポレートレポート202415中期経営計画これは、権限委譲がほとんど行われていなかった当グループのありようを象徴しています。末端の人事を上層部が行う会社も珍しいと思いますが、実際、現場の社員、とくに若手のことを上層部は充分に把握できません。つまり、現場で頑張っている若手を抜□するなど、人材の力を生かすような人事が十分行われていませんでした。人的資本の重要性がフォーカスされる中で、この制度が弱みとなると考え、少しずつ現場の改革を実行してきました。管理職には、自分の後継者を想定し、その育成を進めることを指導してきました。今後は、こうした動きを各事業セグメントにも展開を図っていきたいと考えています。 人材の力を引き出すにはその人に合った方法を見極めることが必要です。私は人が仕事をする上で、自分の能力で仕事をする人と自分の経験で仕事をする人の大きく2つのタイプに分かれると考えています。能力で仕事をするタイプの人は異動とリスキリングによって多様なスキルを獲得し、成長していきます。一方の経験の人は、順序立てて経験を積んでもらうことで成長していきます。今の若手にも3、4年で異動を希望し、今までと異なる仕事に挑戦してみたいという者が出てきています。人そ 紙媒体の印刷事業は、数量が伸びないと利益を生み出せない事業構造です。市場が縮小していく中で、利益の確保が非常に難しい環境になりましたが、市場規模に合わせた収益構造の転換が進まず、収益性の悪化に歯止めが効きませんでした。とくに情報コミュニケーション部門はそれが顕著に表れています。今後は、市場の成長が期待できる生活・産業資材部門に人と予算の配分を振り分けて「稼ぐ力」の強化を図っていきます。主力であるラミネートチューブやパッケージを中心に、サーキュラーエコノミーやフードロスといった社会課題を解決する技術開発を進めるとともに、商圏の拡大に向けて東南アジアの事業展開を加速していきます。さらに、コモデティからの脱却を図るため、赤外線吸収素材を使った蓄熱繊維用の高機能ペレットや、衛生材料などの新素材の開発に経営資源を投入してきました。当グループにしかない新たな機能をもった新素材を事業化し、高収益の確保を目指します。 中長期的には、ものづくりだけではなく、ソリューションや知見を提供する事業を展開していくことを視野に入れています。これらの戦略はもちろん一朝一夕に実現するものではなく、試行錯誤が必要になりますが、実現に向け、挑戦と失敗から学び、大きく成長していく社員を育てていかなければと思っています。縮小していく印刷産業にあって、社員の力で新たな分野を切り拓いていくこと、それが私の使命でもあサステナビリティれぞれの個性にあったキャリアプランを提供することで人材の能力を大きく伸ばせると私は考えています。一方で、企業風土の変革にも着手していきます。今までは会社全体の方向性と自分のミッションとのベクトルを合わせるための、経営層と現場にいる社員との直接的なコミュニケーションの機会が不足していました。従来のピラミッド型の意思伝達では階層構造を経るにつれ、正確な意図が伝わり難く、スピードも遅くなります。また組織全体が「指示待ち」型となり、個々の判断力の低下にもつながります。それでは仕事に対するモチベーションも上がりませんし、何より、社員一人ひとりの能力を引き出せません。そのためにも、経営と現場にいる社員との意思統一を図るべく、直接発信の機会を強化していきます。上の意見を待つのではなく、会社の方向性と照らし合わせながら、自分で考え、責任をもって仕事をする意識を醸成するとともに、若手が自分の意見をしっかりと発言する環境を整えることで、新たなビジネスを生み出す基盤としていきます。当グループには優秀な人材がたくさんいるので、それを生かしていくことができれば、成長は可能だと思っています。ります。また、それを実現するためにDXの推進も不可欠です。紙をデジタルに置き換えるだけではDXではありません。情報のインプットからアウトプットまでのプロセスを大きく変える、それによってお客さまも満足し、収益も大きく変化する、そのようなDXに取り組んでいます。 ステークホルダーの皆さまには、当グループがその安定性を最大限に生かしたうえで、変化し、成長していく、その過程をお見せしたいと思っています。我々がどれだけ変われるかを見ていただき、その変化を認めていただけたら、ぜひ投資を検討していただきたい。それが私の願いです。ガバナンスデータ集収益力の改革財務戦略事業戦略

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