共同印刷グループ コーポレートレポート20243中期経営計画財務戦略事業戦略サステナビリティガバナンスデータ集 新型コロナウイルス感染症が終息に向かい、日本の経済が徐々に以前の活気を取り戻してきている一方で、原材料費の高騰、半導体、ICチップの不足やエネルギーコストの急上昇といった影響もありました。また、気候変動により年々と自然災害が激甚化するなど、社会全体の脅威となっており、企業活動にもカーボンニュートラルへの取り組みが求められています。国内に目を向けると、出生率の低下により、少子高齢化が進み、人口減少による市場の縮小や人手不足を引き起こすなどの影響が出始めています。このような社会環境の変化は加速度的に進行し、しかも一過性のものではありません。当グループもこの変化に対応し、新しい時代や環境が到来したと捉えて、事業の在り方を考え直すべき時だと認識しています。 2023年度の当グループの連結業績は、売上・利益ともに前期を上回り、増収増益という結果となりました。主な要因は情報セキュリティ部門の乗車券や交通系ICカードの受注量の増加、生活・産業資材部門の紙器や軟包装の受注量の増加などによるものです。加えて、原材料やエネルギー価格の上昇分についての価格転嫁を進めたことも収益確保の要因として挙げられます。一方、情報コミュニケーション部門の出版印刷は、消費者の嗜好の変化やテクノロジーの進化によるデジタル化の加速などによって市場縮小が加速し、想定を上回る需要減少となりました。固定費の削減が進まない中で収益性が悪化しているため事業体制の見直しは、早急に対処すべき課題と考えています。 祖業でもある出版印刷ですが、現在の売上比率は20%を下回っています。一方、情報セキュリティ部門、生活・産業資材部門については、売上も伸長し、収益性の改善が順調に進んでいるなど、当グループの事業ポートフォリオはすでに大きく変化しています。現在の3つの事業セグメントの売上は同規模になっていますが、稼ぐ力には差がありますので、引き続き、あるべき収益水準に到達するよう尽力するとともに、将来的には情報コミュニケーション部門と情報セキュリティ部門を合わせた売上高が5割、生活・産業資材部門が5割といった割合にしていきたいと考えています。 生活・産業資材部門は、ラミネートチューブ、フィルムなどの軟包装材や紙箱などを扱っており、高い市場シェアを持つ製品もあります。現在は堅調な国内市場ですが、中長期的に人口減少が続く国内市場だけでは成長に限界があるため、人口増加の見込めるインドネシアやベトナムなどのASEAN地域をターゲットに、事業の展開を図っています。生活・産業資材はデジタル化による市場縮小が生じにくい領域ですので、これまでにない高付加価値製品を生み出し、事業を拡大、強化していかなければなりません。当グループが半世紀にわたって蓄積してきたパッケージのコア技術を最大限に生かし、新たな価値を持ったイノベーティブな製品を早期に開発するために、研究・開発投資を積極的に行っていきます。 情報コミュニケーション部門については、出版印刷事業を市場サイズに合わせた体制に構造改革することと、デジタルの時代に伸長が期待できる事業の開発を同時に行っていくことが必要と考えています。また、情報セキュリティ部門では、データプリント、乗車券類、交通系ICカードの3つを主力として、現在のところ順調に推移していますが、いずれも人口減少や、デジタル化の影響を受ける分野です。出版印刷事業ほど急激ではありませんが、中長期的には市場縮小が見込まれますので、情報コミュニケーション部門と情報セキュリティ部門の特徴を生かしたデジタルソリューション領域で、今後の成長事業の開発を目指します。皆さまがイメージする「印刷」という工程は、印刷事業における最終プロセスに過ぎず、我々は、その前段階で大量のデータをさまざまな形で処理、加工するプロセスを担っています。印刷におけるデータ化は画像処理技術やカードなどの情報処理技術をはじめ、40年以上前から始まっており、私たちにはさまざまなデータを扱う経験、情報に価値を与える技術、情報漏洩を防ぐノウハウが蓄積しています。これらの知見は価値創出の源泉となる大きな財産であり、その技術と経験を継承し、新しい価値の創造につなげていくことが非常に重要です。こうした情報処理技術を背景に、デジタルソリューション分野の拡大を図っています。さらに教育分野に着目した「まなび創造プロジェクト」を立ち上げています。少子化により戦後のピーク時と比較して4分の1近く子どもの数が減少しているのですが、教育関連の市場規模は縮小どころか、従前とほぼ同じ規模を維持しています。これは子ども一人にかける塾や習い事の費用が増大していることを意味すでに到来している新しい時代変化する当社グループの事業ポートフォリオ
元のページ ../index.html#5