仮仮
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時代の大きな転換点に立つ今、激しく変化する社会のなかで、
TOMOWELはどのような未来を描き、どんな価値を創造していくのか。
刷新された理念体系と長期戦略をもとに、これからの10年を見据えた挑戦が始まっています。
今回は、二人の役員が現状の課題や手応え、そして未来への使命と希望を語り合いながら、
「共にある未来」へのビジョンを紐解いていきます。

PROFILE

代表取締役社長

大橋 輝臣

1987年慶応義塾大学卒業、共同印刷入社。経理部 財務課長、経営企画本部 総合企画部長、ビジネスメディア(現セキュアサービス)事業部長、情報セキュリティ事業本部長などを経て2023年取締役常務執行役員、24年取締役副社長執行役員。25年4月から現職。

筆頭独立社外取締役

髙岡 美佳

2015年、当社社外取締役に就任。2021年、当社筆頭独立社外取締役に就任。立教大学経営学部教授、SGホールディングス株式会社社外取締役、株式会社ニップン社外取締役。

スペシャル対談〜第1部〜

01 経営理念とは何か?

経営理念とは、
企業の存在意義であり、未来指針

最初に経営理念について伺います。「経営理念」とは、どのような存在だとお考えでしょうか。

大橋:
経営理念は会社の存在意義や使命を明文化したものであり、組織としてのあるべき姿や進むべき方向を明確化する「軸」のようなものだと思っています。これまでも理念を掲げてきましたが、時代や事業環境が変化するなかで、その表現がいまの事業と合っているのか、自分たちの活動を適切に言語化できているのか、再考が必要だと感じていました。今回、私たちが掲げた新しい経営理念「創意と熱意で新たな価値を生み出し、共にある未来を実現する」は、単なる言葉の刷新ではなく、組織のあり方や働き方、社員一人ひとりの行動にまで直結する実践的なフレームワーク(活動の基盤)だと考えています。
髙岡:
経営学的な観点から申し上げると、経営理念には大きく3つの要素があります。一つ目が「基本思想」。企業が何のために存在するのかを示すもので、共同印刷グループの新たな経営理念では、「共にある未来を実現する」がその部分に当たります。二つ目が「手段」、つまりどうやってその思想を実現するか。共同印刷では「新たな価値を生み出すこと」が手段です。そして三つ目が、「誰がそれを実行するのか」という視点です。今回の経営理念では、「創意」と「熱意」を持った社員一人ひとりがその担い手として明確に位置づけられています。
私はこれまで500社以上の理念を分析してきましたが、この“社員の関与”への言及が抜けている企業が意外と多いのです。今回の経営理念は、その点をしっかり意識され、社員に対する期待と信頼が明示されている。これは非常に優れた点だと思います。
大橋:
ありがとうございます。価値観が多様化し、社員一人ひとりが自律的に判断・行動することが求められる時代において、経営理念は会社と個人をつなぐ共通の価値観として、より重要性を増していると感じています。
理念に込めた想いを端的に言えば、「社員を主語にしたい」です。経営理念を策定する際は、この想いを大切に、社外の視点も広く取り入れながら、社員一人ひとりが納得感と期待感を持てる言葉に仕上げていきました。そのプロセス自体が、「共にある未来」の一部だと思っています。

02理念体系の刷新に至った経緯

変わっていかなければダメだ。
理念体系の刷新は、危機感の表れ

なぜいま、理念の刷新が必要だったのでしょうか。

大橋:
以前の経営理念は「印刷事業を核に、生活・文化・情報産業として社会に貢献する」でした。しかし、当グループの事業領域は印刷だけにとどまらず、事業もソリューションやDX、技術開発を含めた多様な展開をしています。近年、さまざまな要因により経営環境は大きく変化しており、そのなかで変化に対応しながら、ステークホルダーの期待に応え、持続的に成長するためには成長戦略の明確化やしっかりとした「軸」が必要だと感じていました。
また、これまでの経営理念はやや抽象的で、現場で働く社員が自分ごととして受け止めにくい側面がありました。社員が“自分の言葉” “自分の行動”の指針として語れる経営理念が必要だと感じたのが、刷新を決めた大きな理由です。
こうした認識のもと、2023年12月から経営層を中心に当グループのあり方について議論を重ねてきました。実際のプロセスでは、経営層主導のもと、社員の声も取り入れました。「現場の実感こそがこれからの会社の行動原理になる」と考えたからです。実際にビジネスの現場では、上が決めた方針に従うのみでなく、ときには現場の声を受けて柔軟にプランを修正し、方向性を共有しながら前進していく必要があります。そうした考えが、今回の経営理念刷新のプロセスにも、もちろんフレーズにも色濃く反映されています。
髙岡:
その点については、私も大きく二つの点で意義を感じています。一つは、社員の意見をしっかりと取り入れたボトムアップ型のプロセス。もう一つは、時代の加速度的な変化に対応しようとする姿勢です。
まず前者についてですが、若手社員やミドル層の方々から「大橋さんとはよく話す」という声を聞きます。大橋さんが対話を重視し、社員の考えに真摯に耳を傾けている証だと思います。
今のように変化が激しい時代においては、トップダウンによるスピード感と、ボトムアップで現場の知見を集めて柔軟に対応する力を上手く組み合わせて経営していくことが求められます。その点で、大橋さんのフラットなコミュニケーションスタイルと今回の経営理念刷新のプロセスは、まさに今の経営環境に合致していると感じています。経営理念の刷新を決断しながら、そのプロセスにおいては現場と同じ目線で広く多角的に未来を見据えていく。その姿勢こそが今回のポイントであったと思います。
大橋:
もう一つ、経営理念の刷新を決めた際に大切にしたのは、「TOMOWEL」というコーポレートブランドです。2017年に迎えた創業120周年を機に導入したものですが、社員に浸透し、愛着を持たれています。だからこそ、新たな経営理念は「TOMOWEL」の精神から外れてはいけないという想いがありました。
経営理念とブランドを別々のものとして考えるのではなく、TOMOWELという土台に理念がしっかり乗る構造にしたかった。そういう意味で、TOMOWELと新たな経営理念が一体となって、企業のめざすべき姿を明確に示せるようになったと感じています。
共同印刷という社名の背景にも、「共に協力して未来を築いていく」という精神※がありました。当社は精美堂と博文館印刷所という二つの会社が合併して誕生しましたが、その際、当時の社長がまさに「共に」というキーワードを掲げていたと聞いています。それを思うと、私がこのタイミングで社長に就任し、「共にある未来を実現する」という経営理念を掲げることに、何か縁のようなものを感じています。
※初代社長・大橋光吉の経営思想「共同の精神は協力一致に在り、共存共栄を理想とすべし」

03「創意」と「熱意」に込めた想い

経営理念を「動き」につなげる。
その原動力が「創意」と「熱意」

新しい理念では、「創意」「熱意」という言葉が印象的です。これらにはどのような想いが込められているのでしょうか。

大橋:
「創意」と「熱意」は社員に対する期待であり、信頼の証でもあります。今回こだわった点の一つです。
「創意」とは、新しい視点・知識や工夫をもって、常識に捉われずに挑む柔軟な姿勢。まさに社員一人ひとりの“多様な発想の力”と“未来を創り拡げていく力”への期待です。特に若手の皆さんには大きな可能性があると思っています。
「熱意」とは、最後までやり遂げる強い意志や情熱。目標に向かって継続的に向き合い続ける熱量を指しています。新しい挑戦には必ず壁がありますが、それを乗り越えて成果につなげる原動力になるのが“熱意”だと信じています。
経営理念にこの二つの言葉を入れたのは、日々の現場で働く社員一人ひとりが、当事者としてこの理念を“動かして”ほしいからです。
「創意」と「熱意」。両方入っていることがポイントであり、共同印刷らしさなんです。また、「創意」と「熱意」は、経営理念のなかで“社員を主語”にした部分です。社員一人ひとりがこの経営理念を“動かす”存在であってほしい。そうした想いを込めて、この言葉を選びました。
髙岡:
社員一人ひとりに対する明確なメッセージにもなっていますね。「創意」や「熱意」といった言葉を明確に理念に組み込んでいる企業はまだ多くはありません。特に2000年以前に策定された理念には、「成長」「発展」「利益」といったワードが多く、柔らかさや社員視点が欠けている傾向がありました。
しかし2000年以降、企業理念は「つながり」「共感」「暮らし」など、より生活者や従業員の視点を取り入れたものへと進化してきています。今回の共同印刷の経営理念には、その進化のエッセンスが含まれています。「創意」と「熱意」の明確な打ち出しは、時代性を捉えていると感じます。
加えて、いまの日本企業が直面しているのは「議論はするが行動に移さない」という問題です。「大企業病」とも言われる状況であり、今まさに必要なのは、「熱意」をもってやり遂げる力です。「創意」だけではビジネスは成立しません。「熱意」があってこそ、「創意」が活きる。そのサイクルを経営理念として打ち出すことには、非常に大きな意味があると思います。
大橋:
そうですね。社員に向けた強いメッセージでもあります。単に会社がこうありたいという願望ではなく、社員一人ひとりが主体的に関わってほしいという想いを込めた表現です。
髙岡:
とても重要なポイントだと思います。実際、多くの企業が理念のなかで「何をめざすか」や「社会的意義」には触れていますが、「社員がどう関わるか」まで踏み込んだ例は多くありません。そこに言及しているという点で、共同印刷の経営理念はメッセージ性が強いと感じます。

04「共にある未来」とは

関わるすべてと共に良い関係を築き、
未来を創り拡げていく

もう一つ、理念の核とも言える「共にある未来を実現する」という言葉についても、詳しく伺えますか。

大橋:
これは、お客さまや取引先、社員、地域社会など、私たちと関わるすべての人と、持続可能で豊かな未来を一緒に築いていこうという想いを表しています。
経営理念の再検討にあたり、まず見つめ直したのが私たちの存在意義でした。その結果として、私たちのアイデンティティの核とも言える “共同” の想いを端的に示す 「共にある未来」と定義しました。
ビジネスは一人では成り立ちません。だからこそ、共創と信頼をベースに「共にある」姿勢を大切にしたい。それが、TOMOWELの「関わるすべてと共に良い関係を築き、未来を創り拡げていく」ことにつながると信じています。
髙岡:
企業に求められる社会的責任は年々大きくなっていて、SDGsやESGといった国際的な潮流、そしてそれらを踏まえたサステナビリティ経営の観点からも、自社だけの利益追求ではなく、社会課題の解決に向けた貢献が求められています。経営理念が単なる言葉にとどまらず、人と人との関係性、さらには社会とのつながりを意識したものになっている。まさに時代に即した表現ですね。
「共にある未来」には、社会との共生、互いの持続可能な発展と成長への意志が込められています。私が共同印刷に関わるようになって10年ほど経ちますが、当初から、そうした思想が非常に強い会社だと感じていました。また、「共にある未来」は、企業と社会の関係性を双方向で捉えるという意味で、経営において重視される「ダブルマテリアリティ※」の考え方にも通じます。企業が社会からどんな影響を受けるか、逆に企業が社会にどう影響を与えるか、その両面を意識する視点が、今回の経営理念に色濃く表れていると感じています。
※ダブルマテリアリティ:企業の持続可能性に関する報告において、社会・環境の課題が企業の財務的な状況・業績に与える影響(財務的マテリアリティ)と、企業の活動が社会・環境に与える影響(社会・環境的マテリアリティ)の双方を考慮する考え方。

05新旧経営理念の違いとこれから

すべてのステークホルダーに対し、
「どう在り」「何をして」「どう貢献するか」を明確に

以前の経営理念「印刷事業を核に、生活・文化・情報産業として社会に貢献する」から、新たな経営理念「創意と熱意で新たな価値を生み出し、共にある未来を実現する」へと変わりました。そのアップデートに関して、違いや連続性はあるのでしょうか。

大橋:
旧経営理念にある「社会に貢献する」という言葉は、非常に良い言葉だと思います。しかし、日常業務のなかでは、正直あまり意識していなかったと感じています。今回の刷新にあたっては、より主体性をもって、私たち自身が「何をするか」を明確にする必要があると感じました。特に「共にある未来を実現する」という言葉には、お客さまやサプライヤーと対等な関係を築いていく、強い意志を込めました。以前はどこか従属的な立場で「顧客に尽くす」「社会に奉仕する」という部分もありましたが、これからは我々自身が価値を提供する存在となり、関わるすべての人と“対等”に、そして“共創”して未来を築いていく姿勢が大切だと考えています。
髙岡:
なるほど。「共にある未来」は、そうした対等な関係性のなかでの共創を意味しており、顧客やサプライヤーそして社員との関係性を再定義する強い意志なんですね。
大橋:
まさにそうです。そしてこの言葉は単なる美辞麗句ではなく、実際にビジネスのなかで利益に結び付けていくことで初めて意味を持つと思っています。利益を生み出すということは、社会に対して価値を提供している証でもありますから。
髙岡:
そうですよね。率直に申し上げて、新たな経営理念は大きな進化だと思います。旧来の「印刷事業を核に~社会に貢献する」という経営理念は「事業の説明」であり、どのような業種に取り組んでいるかを定義したものでした。一方で、今回の「創意と熱意で新たな価値を生み出し、共にある未来を実現する」は、企業としての在り方そのものを示しています。どのような姿勢で社会と向き合うのか、どのような価値を大切にして未来を形づくっていくのかが明確に表れています。 また、「共に」という言葉の意味も非常に多層的ですよね。現在は「パートナーシップ構築宣言」などの動きもあり、企業規模に関わらず公正な取引を行うことが強く求められています。共同印刷は、大企業の立場としては、そうした意識で自社のサプライヤーと取り引きしていると思いますが、同時にサプライヤーの立場としては、まだまだ相手に対し従属的になりがちです。理想的には、大橋さんがおっしゃったように、どちらの立場でも対等な関係を築くことが求められます。お互いの立場にかかわらず、対話を重ねて相互にメリットのある関係をつくる。そうすることで初めて、「共にある未来」という理念が現実のものとなるのだと思います。 そういった意味で、新たな理念では「変わっていこう」「創っていこう」という強いメッセージが込められている。社員にとっても、「私たちはどう在り、何をめざすのか」がわかりやすくなったと思います。
大橋:
そうですね、今後は新たな経営理念を浸透させていかなければなりません。まずはやはり、社員一人ひとりが共感し、自分の言葉で語れるようになること。その上で、理念がビジネスの判断軸となり、行動の指針として定着することが重要です。それができれば、社外にも「本気で社会に向き合っている」と伝わるはずです。経営理念は掲げて満足するものではなく、日々の現場に息づかせて、動きにつなげていかなければ意味がありません。 そのためにも、経営理念を行動や仕組みとして表現するチャンスを創出することが必要だと考えています。「熱意」と「創意」を持つ人材が活躍できる場をいかに整備していくか。ビジネスコンテストのような機会や、若手にスポットを当てる場を通じて社員の背を押し、社内に理念の体現者をどんどん増やしていきたいと思います。社員一人ひとりが「創意」と「熱意」を持って、自らの仕事を“理念とつなげる”ことで、グループとしての進化が実現できると信じています。

刷新された経営理念をきっかけに、社内外の関係性がより強く、より広くつながっていく未来が楽しみですね。そして、新たな共創の関係が生まれていくことを期待しています。では次に、こちらも刷新された長期戦略やマテリアリティについてお伺いします。