事業の壁を越えていく、
その鍵が経営理念
では、3つのマテリアリティについて、一つずつ詳しくお話しいただけますか。まずは「イノベーションを通じた社会課題解決への貢献」について。
- 大橋:
- 単なる製品やサービスの提供にとどまらず、社会が抱える課題に対して積極的に価値を提供していくことが、これからの企業に求められる役割だと考えています。
印刷という従来の枠組みを超えて、生活や文化、情報を支える多様な事業を展開してきた当グループだからこそ、技術と創意を結集して新たなソリューションを生み出すポテンシャルがあります。例えば、環境に配慮したパッケージの開発や、自治体や企業との連携による地域活性化の支援、情報のユニバーサルデザインへの取り組みなど、多様なニーズに応える取り組みを進めています。
また、社会課題の解決に向けては、部門横断の視点で複数の知見を融合させることが鍵となります。そのためには、日々の業務のなかで「なぜこの仕事をしているのか」「社会にどう貢献できるのか」を常に問い直し、アイデアを形にしていく企業文化の醸成が求められます。こうした地道な積み重ねがイノベーションを生み出し、価値創出につながると信じています。
- 髙岡:
- まさに経営理念と戦略が重なる部分ですね。イノベーションというテーマにおいても、社内の「創意」を刺激する取り組みが重要です。例えば共同印刷では、2022年から毎年社内でビジネスコンテストを開催していますが、これは社員一人ひとりのなかにある“アイデア”や“ネタ”を「創意」として育て、カタチにする機会を提供する取り組みです。社員のなかにはアイデアを発信する場を持っていない人も多く、そうした方の「創意」が表に出ることで、組織全体がイノベーションに向かって活性化していくと感じます。
今後はさらに、社外のベンチャー企業との共創や、外部との連携を取り入れたオープンイノベーションへと進化する可能性もあると考えています。新たな発想は、異なる価値観が多く集まり互いに刺激し合う環境のなかでこそ、生まれるものでしょう。多様性とイノベーションは密接に関係しているからこそ、「共にある未来」の実現には、“共創”の姿勢が不可欠なのです。
次の「人材戦略」は、大橋さんが特に重視していると伺っています。
- 大橋:
- 人材こそが競争力の源泉という思いを持っています。人が挑戦し、動かなければ会社は変わりません。私たちの事業は、いわゆる“モノづくり”と“コトづくり”の両面を持っています。だからこそ、社員一人ひとりの「創意」と「熱意」が不可欠なのです。
そのため、当グループでは人材育成の制度改革や、リスキリングを含む学びの機会の提供、職場環境の整備などに力を入れています。年齢、性別、経験に関係なく、「創意」や「熱意」のある人を見つけ、サポートし、それぞれが持つ強みを生かしてチャレンジできる風土を育てたい。誰もが自分の仕事に誇りを持ち、主体的に働く組織をめざして、人材戦略をより実効性のあるものへと進化させていく考えです。
- 髙岡:
- 経営理念の実現主体として社員にフォーカスを当てるというのは、非常に力強いアプローチですね。「人材戦略」は非常に重要だと考えています。人材育成のあり方を、単に「育てる」という一方向の関係ではなく、会社が社員に期待をかけ、その期待に応えようとする社員が「熱意」を持って挑戦していくという、ダイナミックな動きにしていくことが重要です。そうした「熱意」が組織全体に波及し、次世代のリーダーシップを自然に形成していく流れを生むこと。それが、経営理念で掲げる「熱意」を現場で体現していく姿ではないでしょうか。
このように、人材を起点とした企業変革を可能にするには、戦略・施策と密接に連携した育成プランの整備と運用が不可欠です。今回の経営理念刷新とマテリアリティの明確化によって、その基盤が整ったことは、共同印刷にとって非常に大きな転換点だと思います。
- 大橋:
- おっしゃる通りですね。人材育成とひとえに言っても、それは単なる研修や制度の整備ではなく、事業継承・継続、そして持続的な発展や成長に直接結びつくものであるべきだと考えます。だからこそ、私が一番危惧しているのは“属人化”です。
この人でなければできない──というのは、組織運営としては非常にリスクが高い。属人化が進むほど、その人が抜けたときに業務が立ち行かなくなる可能性が高くなります。そのため、常に人材を循環させて、業務が属人化しない仕組みをつくる必要があると考えています。
最後の「リスクマネジメント」についてはいかがでしょうか。
- 大橋:
- リスクマネジメントは一見すると、ほかのマテリアリティと比べて地味に映るかもしれません。しかし、変化が激しく不確実性の高い時代において、持続的に成長するためにはリスクを適切に捉え、予防し、むしろチャンスに変えていくことが極めて重要です。情報セキュリティやサプライチェーンの安定、コンプライアンス対応など、経営基盤の強化に直結する領域でもあります。そのためにも、経営戦略と連動した土台としてのリスクマネジメントを重視しています。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点においても、リスクマネジメントは企業の信頼性を担保する鍵となります。単に守りに徹するのではなく、将来を見据えた攻めのリスク対応へと進化させ、変化を先取りしながら前進する企業でありたいと考えています。