STORY 07

【新素材開発編】

新素材・新材料で、
未来を支える!

印刷技術をベースにして、印刷以外のものをつくる。
そんな挑戦を続けているのが、今回ご紹介する新素材製品開発部です。
その開発内容は、「そんなこともできるの?」という驚きの連続。
意外な製品を、意外な着眼点から、意外なプロセスで製品化していました。

PANELISTお話ししてくれた人

  • 島根博昭

    Hiroaki Shimane

    共同印刷株式会社
    技術開発本部 新素材製品開発部

    島根 博昭

    2007年の入社から、
    技術開発部門で偽造防止技術の開発に従事。
    その後、証券系の製品開発を経て
    2024年より現職。

  • 山本光

    Hikaru Yamamoto

    共同印刷株式会社
    技術開発本部 新素材製品開発部

    山本 光

    2007年入社。技術開発部門でパッケージの開発に従事。
    当社の主力パッケージ製品から関連医薬包材まで
    多岐にわたる開発に携わった。
    2021年より現職。

印刷技術を使って、新たな材料を開発する

新素材製品開発部とは、一体どんな部署なのでしょうか。

島根

名称通り、新しい素材・材料を開発しています。それを製品化し、別業種のメーカーに使っていただくことをめざしています。

その「新しい材料」は、印刷用の材料なんですか?供給先は別業種ですよね?

島根

少々わかりにくいかもしれませんね。当社が過去に開発した技術や、印刷分野で以前から使用していた素材・原料などを使って、新しい材料を開発しています。

山本

新素材製品開発部ができる前、島根は偽造防止印刷の技術を、私はパッケージ製品を開発していました。こういった技術を、印刷以外の分野に転用するのです。二つほど具体例を挙げて説明しましょう。

例1:近赤外線吸収材料

島根

一つ目は、すでにアパレルメーカーやスポーツ用品メーカーで製品化されている「近赤外線吸収材料」です。この容器に入っている樹脂のペレットが、当社が開発した素材です。

これが赤外線を吸収するのですね。

島根

そうです。「近赤外線を吸収する」という機能を持つペレットの開発は、私が長年にわたり携わった偽造防止印刷の技術がもとになっています。

「赤外線で偽造を防ぐ」とはどんな技術ですか。

島根

紙幣や金券などの偽造防止に使われています。赤外線を吸収するインクで印刷したものを赤外線カメラで見ると、インクが赤外線を吸収するため、黒く写ります。つまり、赤外線カメラを使って真贋判定ができるわけです。このペレットにも赤外線を吸収する機能があります。

その機能と、アパレルやスポーツ用品とのつながりがよくわからないのですが…

島根

私たちは、この偽造防止のインクの材料を「印刷以外」「偽造防止以外」に使えないかと考えていました。そんななか、このインクの機能について材料メーカーと話しをするなかで「赤外線を吸収する際に熱を発する」「遮熱材としても使われている」といったことを聞きました。

なるほど。それらの特徴が服に使えるかも、と考えたのですね。

島根

その通りです。

どんなものができあがったのでしょうか。

島根

最初は「暖まる服」です。当社が製造した近赤外線吸収ペレットは、文字どおり太陽光の中の近赤外線を利用して暖まります。このペレットを利用して繊維メーカーが糸を作り、生地メーカーが生地に加工します。この生地から衣類が作られました。薄くて軽量なのもポイントです。

共同印刷は服でも生地でもなく、生地を作るための材料を作ったのですね。

島根

そうです。次に製品化されたのが「盗撮防止機能のあるスポーツ用ユニフォーム」です。アスリートに対する赤外線カメラを使った盗撮が社会問題になっていますが、このペレットを使った生地を使用することで、それを防ぐことができます。

赤外線カメラで見ると黒く写る特性を応用したのですね。

島根

はい。そして三つ目は「肌老化の防止」が期待できる服です。最近の研究で、近赤外線に肌の組織を傷める作用があることがわかってきたのですが…

赤外線をカットする布地を開発したということですね。

島根

このように、視点を変えることで新しい用途がいろいろ生まれます。これを製品化するのです。

共同印刷が、このような「材料」だけを商材にするのは珍しいのでは?

島根

そうですね。当社の製品は、出版事業で例えるなら「本」という完成品ですからね。材料のような工程の上流を担う製品は、これまでほとんどなかったと思います。

例2:衛生材料

山本

もう一つの具体例は私が説明します。「ウイルス・菌・カビに作用する衛生材料」です。ウイルスなどがこの材料に接触すると、1分で不活化されます。

これも印刷技術がもとになっているのですね。

山本

そうです。もともとは無機顔料、つまりインクに使われる材料です。「お札にはいろんな菌などが付着している」という話を聞いたことはありませんか?

あります。新型コロナウイルスのパンデミックのときは、紙幣を介して感染する可能性が指摘されていました。

山本

そのような事が問題視され、あのパンデミックの前から特殊技術を持つ当社が相談を受けることがありました。これがきっかけとなって、この衛生材料が生まれました。

どんな特長があるのですか。

山本

単一の材料で、ウイルス・菌・カビに対して幅広い効果を示すことですね。また、この材料は、「接触」により作用します。従来の薬剤のような、成分の溶出するタイプとは異なり、意図しない範囲への作用を抑制できます。また、海外では使用の規制が広がりつつある銀や銅を使っていないのも大きな特長です。

衛生材料で染色した生地サンプル

この材料は、どんな製品に展開されているのですか。

山本

実はまだ開発途中で、どんなものに使えるか検討している段階です。ニーズが非常に高いことはすでにわかっていますし、新型コロナウイルスのパンデミックのような状況がいつ起こるかもわかりません。どんな製品にするのが望ましいか、いろんな視点から考えています。

製品化が楽しみですね。

開発の面白さ、そして難しさ

開発はどのように進めているのですか。

島根

二通りありますね。一つは、「この技術は、こんな分野に転用できるのではないか」と考えて積極的にほかの業種へ提案し、開発に進む場合。もう一つは、お客さまや協力会社と会話していて「こんなことで困っている」「こんな機能のある素材を探している」といったニーズを聞き、「それなら当社のこの技術が使えるかも」と考えて提案・開発する場合です。

共同印刷から積極的に提案しているのですか。

山本

そうですね。お客さまから相談をいただいてそのまま開発に着手するパターンと、「この技術はこんな分野に転用できるのではないか」といって、当社とお付き合いのなかった異分野・異業種の企業にも積極的に自主提案するパターンがあります。

大変ですね。でも、やりがいがある仕事なのでは?

島根

印刷会社っぽくないところが面白いと思っています。

山本

しかし、ベースにあるのは印刷技術なんですよね。

島根

山本の場合はパッケージの技術、私の場合は偽造防止などの技術を、どうやって「違うもの」に展開するかを考えます。とても楽しいですよ。

山本

島根と私とで、印刷に関する考え方やそれまで「印刷会社の常識」と思っていたことが違っていたりしますからね。意外な気づきや発見の連続です。

それは、以前所属していた部署が違うからですか?

山本

そうですね。私たち以外にも、さまざまな部署からメンバーが集まっていますよ。みんな、いろんな専門技術に精通しています。

どんなところに大変さを感じますか?

島根

開発対象が広すぎて、取っかかりが少ないところ…ですかね。

山本

的を絞り込むのが特に難しいんです。だから「この技術は、こんな分野に転用できるのではないか」という場合は、いろんなアイデアを出し、いろんなサンプルを作成して、さまざまな業種のお客さまに提案します。業種の選定もサンプルづくりも大変です。

サンプル?

島根

「この材料で、こんな商品を作ってみては?」と紙の資料で提案しても、お客さまは具体的なイメージを持てません。サンプルが必要です。

どんなものを作るのですか。

山本

例えばアパレルメーカーの場合、布地や服にして持っていくと、よりわかりやすくなります。

布のサンプルを印刷会社が…たしかに大変そうですね。

島根

最近はだいぶ慣れましたが(笑)。

新素材製品開発部が切り拓く未来

この「支える、TOMOWEL」のWebサイトではさまざまな新しい取り組みを紹介していますが、その多くが印刷会社らしくないと感じています。

山本

印刷会社は新しいことにどんどん挑戦しなければいけない時代ですからね。

その「挑戦」をするためには、どんな姿勢や着眼点が必要だと思いますか。

島根

当社がこれまで築き上げてきた印刷技術を生かすことです。それを使って、印刷会社らしくないものをつくる。そして、そのプロセスはきちんとお客さまに説明する。そこに私たちが挑戦する価値があると思います。「なぜ共同印刷が『暖まる服』なのか」の説得力も高まりますからね。

山本

「姿勢」や「着眼点」とは少し違うかもしれませんが、新素材製品開発部という部署が、既存の事業部と切り離されていることも意識すべきだと考えています。

どういうことでしょうか。

山本

当然の話ですが、事業部としては生産機をフル活用できる製品が望ましく、どうしても手の届く範囲での開発になってしまいがちです。

事業部門なら、製造設備を使うことを前提に開発する必要があるということですね。

山本

そうです。しかし私たちは社内的にフリーな立場なので、材料の開発・提供というビジネスをどう組み立てるのがベストかを、製造設備に縛られることなく、自由に考えることができます。

大切なのは「共に」の姿勢

開発にあたって大切にしていることは、ほかにありますか?

島根

「協業」や「協力」ですね。

それは、社内の他部署との連携ということですか?

島根

それもありますが、より強く意識しているのは、社外の協力会社ですね。

山本

例えば、先ほど話に出た布地のサンプルは、当社だけでは作ることができません。社外の知見や製造設備などが、私たちの仕事には欠かせないんです。

島根

赤外線吸収素材が「熱を発する」という話は、協力会社から伺っていますし、違った視点や考え方は、社外から得られることが多いと感じています。

新素材の開発には、ほかの企業の協力が不可欠なんですね。

山本

そうですね。新しい素材は「協業」から生まれる…と言えると思います。

島根

つまり「共に」の姿勢です。当社のブランドネーム「TOMOWEL」とつながります。

まさに「共にある、未来へ」ですね。新素材製品開発部の今後が、とても楽しみです!

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