STORY 09

【生成AI編】

セキュアなAI活用で、
ビジネスの未来を支える!

生成AIは、企業の仕事をどう変えるのでしょうか。
TOMOWELの共同印刷では、社内に蓄積された提案書を簡単に探し出せる仕組みを開発し、実証実験を行いました。
この取り組みから見えてきたのは、AIがビジネスの未来を支える「新しい形」でした。

PANELISTお話ししてくれた人

  • 島根博昭

    Hiroki Kazuno

    共同印刷株式会社
    IT統括本部 デジタル戦略開発部

    鹿角 大貴

    2018年入社。データマーケティングの企画部門を経験後、IT開発部門に所属。2025年より現職。

  • 山本光

    Kotaro Yamada

    共同印刷株式会社
    IT統括本部 デジタル戦略開発部

    山田 康太郎

    2022年入社。社内外へデータ利活用支援を行う「データソリューション部」に所属。2025年より現職。

印刷会社とIT技術の深い関係

お二人が所属する「デジタル戦略開発部」とは、どんな部署ですか?

山田

共同印刷の、デジタル分野における競争力を高めるために作られた部署で、二つのグループに分かれています。一つは、お客さま企業の業務をデータ分析で支えるサービスの提供を担当するグループです。

鹿角

もう一つは、サービスの基盤となる技術の開発を担当するグループで、今回お話する「生成AI」はこちらのグループが中心になって取り組みました。

印刷会社の業務とは、少しイメージが違いますね。

山田

そうかもしれませんが、印刷会社とデジタル技術は深い関係にあります。例えば、最近は電子書籍のまんがが増えていますよね。実は、印刷用のデータを単純に電子書籍化するだけでは、キレイに仕上がりません。

どういうことでしょうか?

鹿角

「スクリーントーン」はご存知ですか?

登場人物の服や背景、影の部分などに使われる、ドットなどの模様のことですね。

山田

印刷用データをそのまま電子書籍化すると、スクリーントーンの部分に「モアレ」と呼ばれる縞模様が出ることがあります。それをAI技術で抑制するサービスを開発しています。

電子コミックの品質を支えているんですね!

鹿角

はい。しかし当社のデジタル領域は、このような画像技術だけではありません。クレジットカード会社からカードの利用履歴情報を市場調査データなどと組み合わせて分析するサービスなども提供しています。

データ分析というのは、ちょっと意外に感じますが…。

山田

当社は、利用明細書の印刷・発送を受託したり、お客さまごとにメッセージを差し換えたダイレクトメールを作ったりといった、顧客データベースを利用した印刷物を多く手掛けてきた歴史があります。先ほどの「分析サービス」は、その延長にあるサービスです。

印刷会社は、お客さまのニーズにあわせて、デジタル関連の業務をどんどん拡大しているんですね。

生成AIで、「提案書検索システム」をつくる

今回は「生成AI」を使ったシステムを開発したというお話ですね。どんなシステムなのですか?

山田

社内向けの「検索拡張生成」です。最近は、検索エンジンを使うと「AIによる概要」が表示されますよね。あのような仕組みです。あれを、社内で作成した提案書データの検索システムにしました。

鹿角

お客さま向けに提案書を作成する機会がとても多いのですが、「A社への提案は、別部署の○○さんが2年前に作成したB社への提案書の一部が参考になるかもしれない」といったことがよくあります。しかし、その提案書を探し出すのはとても大変な作業です。

山田

これを効率化することを目的にシステムを構築しました。提案書をはじめとする各種資料をデータベースに登録し、それを「○○さんが作成してB社に提出した△△△の提案書」のような、自然な文章で検索できるようにしています。

これなら、どんなキーワードで検索するかなどで四苦八苦することはなくなりますね。

鹿角

まさに、それが狙いです。

めざしたのは、セキュアで使いやすい検索システム

このシステムの構築する上で、問題点はありましたか?

鹿角

大きな問題が2つありました。1つは「クラウド型のAIが使えない」ということです。

どういうことでしょうか?

山田

一般的な生成AIは、インターネット上で使用する「クラウド型」がメインです。しかし当社の提案書は、発売前の新商品の資料や特殊なノウハウ、個人情報など、さまざまな機密情報を扱うことが多いんです。クラウド型の生成AIで検索システムをつくる場合、機密情報をクラウド上に保存する必要がありますから…。

セキュリティ面でリスクがありますね。

鹿角

そうなんです。だから、クラウド型が使えません。したがって、ローカルLLM※1を使用して社内に同様の仕組みをつくる必要があります。

山田

もう1つの問題が、「提案書の形式がバラバラ」ということ。ファイル形式だけでも、Word、Excel、PowerPoint、PDFなどがあります。さらに、資料のデザイン・レイアウトは作り手や内容、提案先などによって大きく変わりますよね。

鹿角

生成AIでこれらを検索するには、生成AIが理解しやすいように「構造化」する必要があるんです。わかりやすく言うと、各ファイルのテキスト・画像・図の情報を再利用できる形でデータベースに登録しています。実は、この作業には当社のデータベース構築・運用のノウハウが生かされているんですよ。一方、システム構築自体は生成AIに詳しいパートナー企業に協力いただきました。

※1 LLM: Large Language Modelsの略。人間のような自然な文章理解や生成ができるAIモデルのこと。

手応えも難しさも感じた実証実験

この検索システムを構築するにあたり、実証実験を行ったそうですね。

山田

お客さまへの提案機会が多いプロモーションメディア事業部とセキュアサービス事業部の営業担当者に、協力してもらいました。

どのように実証実験を進めたのですか?

鹿角

過去の提案書をデータベースに登録し、実際にシステムを活用してもらいました。

山田

想定したメインユーザーは「若手の営業担当」です。経験が少ない若手が、過去に先輩たちが作成した提案書を探す際に、より短い時間で発見できることをイメージしました。

よりリアルな視点から使い勝手などを検証したんですね。

鹿角

そうですね。現場ならではの視点からフィードバックを受け、さらに改良させることができました。かなり視野が広がった実証実験になったと思います。

山田

実際に精度の高い検索結果が得られたときは、確かな手応えを感じました。

鹿角

いままではフォルダ内のキーワード検索で過去の提案書を探していたそうですが、ファイルがなかなか見つからなかったり、一回ごとにファイルを開いて中身を確認する必要があったりと、かなり非効率だったそうです。

山田

このシステムを使って検索を行うと、検索結果一覧に提案内容の「要約」が出てくるので、手間を省くことができます。

実証実験を通してかなり効率化できたわけですね。

鹿角

そうですね。しかし、狙い通りの検索結果を得られるようにするまでが大変でした。生成AIを使った検索では、キーワードでの検索に加えてそのキーワードと意味の近い言葉の検索も行います。例えば、「食品メーカー向けの店頭プロモーションの提案書」と検索すると、「小売向け販促キャンペーン」「スーパー店頭イベント」のような、意味の近いものも見つけてくれます。しかしうまく設定しないと、狙いと違った検索結果になってしまいます。ベストなバランスを探るのが大変でした。

〈実証実験の全体フロー イメージ〉
さまざまなファイル形式のドキュメントをナレッジとして活用できるようにしてデータベースに格納。
社員がデータベースにあるナレッジをセキュアな状態で利活用することで業務効率の向上を図ります。

「提案を支える」から、「お客さまを支える」へ

実証実験の次は、どんな取り組みをする予定ですか?

鹿角

社内のいろんな部署から「ローカルLLMを使ってこんなことができないか」という相談を受けています。これらをもとに、より良いAIサービスを具体化していきたいと考えています。

「社内」とおっしゃいましたが、外部への提供は考えていますか。

山田

もちろんです。ローカルLLMを使ったサービスのお客さまへの外販も視野に入れています。そのためにはどんな性能や機能が必要かを設計している最中です。

それは楽しみですね!

鹿角

そうですね。私たち共同印刷が最初の「導入事例」というわけです。

さらに、生成AIは「成長を支える」存在へ

今後、生成AIをビジネスに活用していくにあたり、考えていることはありますか?

鹿角

生成AIは完全ではないということを前提にすべきだと思っています。生成AIが事実と異なる情報や存在しない情報をもっともらしく生成してしまう「ハルシネーション」という問題があります。現在の技術ではこれを防ぐことは難しく、最終的には「人の判断」が重要になります。ハルシネーションを最小限にできるシステムを実現しつつ、人が確実に、しかし少ない労力で確認できる。そんな使い方を実現したいですね。

「お客さまを支える」という視点、つまりお客さまへのサービス提供については、どうでしょうか?

山田

ローカルLLMを実務で活用しようと取り組んでいる企業は少なくありませんが、なかなかうまくいっていないようです。ローカルLLMは機密情報も扱えるという大きなメリットがありますが、先ほど説明した「構造化」、つまり生成AIが扱いやすいデータに加工・編集する作業が、ハードルになっているようです。

なるほど。でも共同印刷なら、そのノウハウがありますね。

鹿角

その通りです。当社には、実証実験で得たノウハウに加えて、データベースの取り扱いや分析サービスで培った「データを扱いやすい形に加工・編集し、管理する力」があります。これをうまく活用して、お客さまのローカルLLM導入をしっかり支えたいと思っています。

それは共同印刷らしい支え方ですね。

山田

さらにもう一つ、「ノウハウの属人化」という問題の解決にも、ローカルLLMをうまく活用していきたいですね。

どういうことでしょうか?

山田

提案書の作成や、過去の提案内容の把握・管理は、属人的な部分が大きいと感じています。

「Aさんは提案書の作成がうまい」とか「○○分野の提案ならBさんに聞いて」のようなことですね。

鹿角

そうですね。これらは個人的な経験を重ねないと得るのが難しい「暗黙知※2」で、若手社員が得るには時間がかかります。

山田

提案書の構造化データのなかに暗黙知も加えることで、「今回の提案内容に近い過去の提案書はどれか」だけでなく、「どうすればもっといい資料をつくれるか」なども知ることができると考えています。

ローカルLLMで、暗黙知の継承までカバーしたいということですね。

鹿角

社員の頭のなかを言語化し、構造化して、価値の高いデータとしてほかの社員や未来の社員にも引き継げるようにする、といったことができればいいと思っています。

山田

当社の暗黙知を利用できる「チャットボット」みたいなサービスがあると、便利かもしれません。

未来に向けて、夢は尽きませんね。

鹿角

そうですね。今後も「支える」ための道具として、ローカルLLMをはじめとした生成AIをうまく活用していきたいと思います。

※2 暗黙知:個人の経験や勘に基づいた知識やノウハウで、言語化して周囲に伝えるのが難しい。

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