特集 共同印刷の価値創造 1

生産的で人間らしい働き方を通じて企業と働く人々がともに成長する新たな価値を提供

働きがいも経済成長も

阿久津 幸伸

ビジネスメディア事業部
事業開発部

小島 昌也

TOMOWEL Payment Service株式会社
COO(業務執行責任者)

手塚 美貴

トータルソリューションオフィス
ICTソリューション部

斉藤 智仁

トータルソリューションオフィス
ICTソリューション部 担当課長

少子高齢化が著しく進む日本では、人口減少、労働生産人口の減少が急速に進み、経済成長を妨げる大きな要因となっています。共同印刷グループはSDGsゴール8「働きがいも経済成長も」の達成に寄与することをめざし、今までにないサービスやビジネスモデルを社会に提供しています。本座談会では、社会課題解決型ニュービジネスの開発担当社員が、新たな価値創造の現場と今後の展望を語り合いました。

健康維持に関わる方々の業務を支え、健康経営の推進に貢献

阿久津:ここ数年、従業員の健康維持増進や高齢化で膨れ上がる医療費の抑制などが社会課題として重要性を増してきました。しかし、実際のところ、企業や健康保険組合は、従業員の健診結果やストレスチェックなどの情報を持っていても、その活用には至っていません。当社は以前から健康診断の受診票や結果票、ストレスチェックなどヘルスケアに関わる印刷や業務支援を行っており、これらの経験で得た知見や外部ネットワークを生かして従業員の健康増進や企業の生産性を向上させる方法はないかと模索し始めたのが3年ほど前です。国が「国民の健康寿命の延伸」の政策を掲げ、企業でも「健康経営®」に関心が高まっていますが、特にこの1、2年でお客さまの意識が変わったと感じています。健康経営の実践には、「企業」と「健康保険組合」のコラボヘルスによる活動が重要ですが、企業の担当者は健康経営の専門家ではなく、専従者の増員も簡単ではありません。そこで、私たちは各々にメニューを用意し、包括的にコンサルティングを行っています。収集したヘルスケア情報を統合・分析し、それを生かした健康経営戦略の立案やKPIの設定、運営体制構築支援などのサービスを提供しています。ある企業の健康保険組合では、10.6%だった健診後の医療機関受診率が勧奨施策の展開によって63.2%に上昇するなど目に見える成果を出しています。BPR※というと格好良いですが(笑)、今では「健康経営の課題は共同印刷に頼んだら解決してくれる」、そう認知していただけるようになりました。

  • ※BPR【Business Process Re-engineering】企業活動の目標(売上、収益率など)を達成するために、既存の業務内容や業務フロー、組織構造、ビジネスルールを全面的に見直し、再設計すること
ビジネスメディア事業部 事業開発部 阿久津 幸伸
ヘルスケアソリューション
ヘルスケアサービスや情報活用提案を通じ、健康とその先にある幸せな社会を実現する「ヘルスケアソリューション」

生産性に寄与しない業務を限りなくゼロにしたい

小島:2018年に社内起業という形でTOMOWELPayment Serviceを設立し、「Bizプリカ」という法人向けのプリペイドカードサービス事業を行っています。日本の会社では、出張、接待、備品購入などの支払いを従業員が立て替えるケースが多々ありますが、「Bizプリカ」は、経理部門がプリペイドカードに仮払金を事前にチャージするものです。クレジットカードと同じように店舗やホテルなどで使え、モバイルSuicaとの連携で交通機関での支払いも可能です。使った記録がすべて残るため、精算業務も不要ですし、誤入力などのミスも発生しません。開発の発端は私自身の体験です。前職で会社経費を一時的に自前で払い、立て替え貧乏に陥った経験があり、管理職が持つような法人クレジットカードを一般社員にも持たせ、若い社員や非正規社員も立て替えせずに出張に行ける、そんなツールができないかと思ったのです。そんな折、クレジットカード会社の方から「プリカ(プリペイドカード)の新しい仕組みづくりを一緒にやらないか」と誘っていただいたことがきっかけでした。仮払い、精算という一連の現金処理業務は企業の生産性に寄与しません。また現金の運用にもコストと手間がかかります。このような業務をキャッシュレスでスリム化することが狙いです。2019年4月からのサービス開始ですが、すでに約300社ものお客さまに採用いただき、非常に好評です。昨今のコロナ禍では、精算のために出社したり、対面で手続きしたりせずに仮払いや精算ができるため、新たな需要が生まれています。

Bizプリカ
事業経費の煩わしい手間を軽減する法人向け経費決済プリペイドカード「Bizプリカ」

TOMOWEL Payment Service株式会社 COO(業務執行責任者) 小島 昌也

阿久津:私もヘルスケアで会社を一つ作るつもりで事業を立ち上げました。早く小島さんに続きたいですね。お互い苦労を理解できる立ち上げメンバーがいるので心強いです。

小島:理解者はとても大事です。私の場合、最初はほとんどの方に「ウチで決済サービスは難しい」と言われました。その中でも賛同、援護射撃をしてくれたのが、私が当時所属していた営業事業部のトップ。現在、当社の社長を兼務しています。

阿久津:周囲に理解されなかったのに、300社に採用いただけるとは。「Bizプリカ」は大成功ですね。

お客さまにも従業員にも快適な、高効率な業務スキームの開発

手塚:私たちが開発したのは、ホテル業向けに"スマートチェックイン""キーレス入室"などを組み合わせた「Travel Manager」というサービスです。ホテルは旅行者に生活の場を提供するため24時間365日体制が当たり前ですが、人手不足が深刻で、一人ひとりの業務負荷も大きいため離職率も高くなっています。こうした社会背景にシステムや技術を導入して対応できないかと考えていました。特にチェックイン、チェックアウトの時間帯は非常に忙しく、宿泊客にとっても待ち時間が生じていました。「Travel Manager」は、チェックインシステムをクラウドで一元管理してフロント業務を効率化する、従業員と宿泊客の双方に快適なサービスです。宿泊客はQRコードを事前にメールで受け取り、フロントに着いたらタブレットにQRコードをかざしてチェックイン手続き。部屋の前のタブレットで顔画像を撮影すればそれがフェイスキーとなります。手書き宿泊カードの提出や鍵の受け渡しといったやりとりは一切不要で、インバウンドのお客さまにも言葉の壁のストレスなくご利用いただけます。実際にお使いいただくと、皆さんその手軽さに驚かれます。お友達や家族のために鍵をフロントに預ける手間や、鍵の紛失・室内への置き忘れの心配もありません。また、ホテル側はタブレット端末だけで導入できるためフロントの省スペース化、将来的には無人化も可能になり、生産性の向上や人材確保などの社会課題解決に貢献できます。導入コストも比較的安価なので、小規模の宿泊施設などにも導入しやすく、地方創生にも寄与できます。

トータルソリューションオフィス ICTソリューション部 手塚 美貴
Travel Manager
チェックインシステムをクラウドで一元管理し、ホテルフロントの効率化、顔認証でのキーレスエントリーを実現する「Travel Manager」

多くの人員や時間を要していた業務を少人数・短時間で見事に実現

斉藤:以前からさまざまなバーコードやRFIDといった自動認識技術を、多様なビジネスシーンや生産、物流の現場特性に合わせて提供してきました。これらのコードをより進化した技術で提供できないかと開発したのが、「フルスキャンコード」です。二次元の可視コードで、最大の特長は複数のコードを一括で読み取れる点です。例えばコードを貼った段ボールが棚一面に並んでいる場合、スマートフォンで棚全体を撮影すれば物品情報を一括で読むことができます。一次元バーコードやQRコード®のように一つひとつにかざす必要はありません。物品がコンベア上で動いていたり、多少のゆがみやピントのずれがあったりしても画像に写ってさえいれば正確に読み取れます。物流業界では、慢性的な労働力不足による働き方改革の要請や、ECの浸透で増え続けるオーダーなどを背景に、業務改革が急務となっています。RFIDの導入は、専用の読み取り装置をはじめ高額な設備導入コストや管理手法の再構築など大掛かりなものとなり、スケールメリットが生かせる大規模拠点以外では難しい状況でした。例えば、棚卸し業務は、ほとんどの企業が手作業や目視検査で行っていますが、人員と時間が膨大にかかる上に間違いが発生しやすいという複数の課題を抱えています。棚卸しは企業にとって不可欠な業務ですが、生産性に寄与しないため負荷を限りなく減らしていく必要があります。そこで「フルスキャンコード」の特長を生かし、読み取りから管理までのシステムを設計、提供し、比較的低いコストで課題解決を実現しました。最大手の建材メーカーの事例では人数×時間あたりの業務負荷を80%も削減できました。ちょっとしたイノベーションと言えるのではないでしょうか。こうした改善効果と、印刷された二次元コードで複数一括読み取り機能を実現した認識技術が評価されて、(一社)日本自動認識システム協会主催の「第19回自動認識システム大賞」で賞をいただきました。

Tフルスキャンコード
複数コードの一括読み取りで管理業務をスマートにし、「物流改革」に貢献する新しい二次元コード「フルスキャンコード」
トータルソリューションオフィス ICTソリューション部 担当課長 斉藤 智仁

一つの技術やソリューションが持つ、さまざまな課題解決の可能性

手塚:スーパーマーケット向けの展示会で「フルスキャンコード」のデモンストレーションとして、お肉の賞味期限を"今日切れる、明日切れる、まだ切れない"の3区分で表示できるソリューションを紹介していました。食の安心安全やフードロスなど、業種や使い方によってさまざまな課題解決ができる技術ですね。

阿久津:そうですね。一つの技術やソリューションでもさまざまな課題に対応できる、開発を体験するとそう実感します。例えば、かつての企画会議では、お客さま自身が作りたいものや解決したい課題を認識されていて、それをどう作るかという議論をしていました。現在では、社会課題を多面的に分析して作るべきものを提案し、プロデュースしているという実感があります。

小島:私も当初は、「Bizプリカ」で、遅れている日本のキャッシュレス化の解消や企業の精算業務効率化に貢献できると考えていました。しかし、今のようにスマートワーク化が進んでいくのを見ると、例えば「Bizプリカ」搭載の社員証が企業のスタンダードになり、従業員には「Bizプリカ」と連携したモバイル端末が渡されて、時間と場所の制約なしに業務を遂行するという未来の働き方も見えてきます。今は日本国内だけですが、いずれ世界標準のサービスに育てる野望を抱いています。

斉藤:皆さんの開発メニューは知っていましたが、実際の取り組みを知ってとても頼もしい気持ちになりました。会社の若い人たちにもどんどん伝えたいですね。社会課題を解決する技術やサービスの提供を通じて、市場にもお客さまにも喜んでもらうことは、自分たちの仕事の本質を見るきっかけになりますし、こういうことを社内に広げていくことが会社の進化につながると思います。

  • ※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
  • ※「QRコード®」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
  • ※本特集に記載の所属・役職は、すべて2020年11月時点のものです。

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