気候変動
基本的な考え方
経済発展にともなう生産、流通および消費の拡大、ライフスタイルの変化を背景に、温室効果ガス(GHG)排出による地球温暖化は、地球環境に深刻な影響を及ぼしています。国際社会では、パリ協定をはじめとする気候変動対策の枠組みが形成され、国だけでなく企業においても気温上昇を1.5℃に抑える努力が求められています。また、中長期的な企業価値に影響を及ぼすサステナビリティ課題として、投資家をはじめとするステークホルダーからも積極的な取り組みの検討および情報開示が期待されています。
当グループは、気候変動への対応を取り組むべき重要な経営課題と捉え、気候変動に関わるリスクおよび収益機会についての分析とそれらを踏まえた環境戦略を進めていきます。気候変動起因の災害リスクや原材料調達リスク、カーボンプライシングの導入や、法規制対応などあらゆる気候変動リスクに対応できる強固な事業体制の構築を進めるとともに、調達先にも理解と賛同を得ながら、原材料から製品廃棄までの製品ライフサイクルでCO2排出の抑制に努める一方、製品・サービスを通じてCO2削減に寄与する開発をすすめ、成長機会へとつなげていきます。
推進体制
「エネルギー適正管理指針」に基づき、「グループ環境委員会」の専門部会である「温暖化対策部会」を核としてエネルギー管理およびエネルギー原単位改善など、気候変動抑制の活動を行っています。活動内容は担当執行役員を委員長とする「グループ環境委員会」を通じて「取締役会」に報告し、マネジメントレビューを受けています。
温室効果ガス排出量の内訳
2024年度の当グループ全体における温室効果ガス排出量(Scope1+2+3)は442,723t-CO2でした。このうち、Scope1の排出量は5,674t-CO2で全排出量の約1.3%、Scope2は36,460t-CO2で全排出量の約8.2%、Scope3は400,589t-CO2で全排出量の約90.5%にあたります。


Scope1削減への取り組み
温室効果ガスの直接排出量(Scope1)は、自社排出量(Scope1+2)の13.5%を占めています。主な排出源は社用車両や生産設備で使用する燃料などです。Scope1およびScope2においては、2022年度基準で2030年度までに42%削減する目標を設定しています。この目標を達成するために、燃料使用量の削減や電化の推進、さらに、環境性や経済性、供給安定性、災害時のリスク対策などを考慮した最適なエネルギーミックスの実現を進めていきます。
Scope2削減への取り組み
温室効果ガスの間接排出量(Scope2)は自社排出量(Scope1+2)の86.5%を占めています。主な排出源は製造拠点で使用する電力です。 Scope1およびScope2においては、2022年度基準で2030年度までに42%削減する目標を設定しています。この目標を達成するために、各工場での省エネルギー対策を強化するとともに、生産体制の効率化と見直しを進め、使用電力の削減を図ります。また、太陽光発電設備など再生可能エネルギーの導入を促進し、電力使用に占める再生可能エネルギー比率の向上をめざします。
再生可能エネルギーへの取り組み
2015年に五霞工場(茨城県猿島郡五霞町)に太陽光発電施設の設置を開始して以来、順次導入を進めています。総発電容量はおよそ2,300kW、CO2削減量は年間約1,100t-CO2となっています。 引き続き、太陽光発電設備の導入を推進していくとともに、小型風力発電設備やマイクロ水力発電設備などについても実施に向けて検討していきます。

Scope3への取り組み
2024年度の当グループ全体におけるScope 3排出量は400,589t-CO2でした。このうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)が全体の約66.1%を占めています。原材料削減の取り組みとして、材料ロスやロス率の低減を進めるとともに、材料使用量の少ない製品の開発や製造過程でのマテリアルリサイクルの促進を行っています。また、ステークホルダーの理解と協力を得ながら、排出係数が低い材料の採用を積極的に推進していきます。
Scope3排出量の削減に向けては、サプライヤーとのエンゲージメントに基づく目標設定を行い、主要サプライヤーとの連携強化に取り組んでいます。具体的には、主要サプライヤーに対し、SBT(Science Based Targets)認定水準に準拠した排出量削減目標の自主設定を要請し、定期的なアンケート調査や個別対話を通じて進捗を確認しています。また、排出量算定や削減目標設定に関するガイドラインの提供など、サプライヤーの脱炭素化をサポートしています。これらの取り組みにより、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出削減を進め、持続可能な成長の実現をめざします。
KGI/KPI
ESGデータ集
イニシアチブ
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、気候変動が企業活動や財務に与える影響を可視化し、投資判断の質の向上につなげることを目的として、金融安定理事会(FSB)により2015年に設立された国際的な枠組みです。
当グループでは、2023年5月にTCFDへの賛同を表明し、気候変動に関するリスクおよび機会の特定・評価を進めるとともに、事業戦略との統合を図っています。また、TCFDの4つの推奨開示項目(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)に基づく透明性の高い情報開示を進めています。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

Science Based Targets initiative(SBTi)
SBT(Science Based Targets)は、パリ協定が掲げる「産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える」目標と科学的に整合した、温室効果ガス(GHG)排出削減目標の設定を企業に求める国際的な枠組みです。
当グループでは、2025年6月にSBTイニシアチブより、Scope1および2におけるGHG排出量を2030年度までに2022年度比で42%削減する目標と、Scope3における主要サプライヤーへの目標設定を推進するエンゲージメント目標の双方について、SBT認定を取得しました。今後も、バリューチェーン全体を視野に入れた気候変動対策を進めてまいります。
※認定の取得状況は、2025年7月17日付でSBTi公式ウェブサイトに掲載予定です。