トップ対談:新コーポレートブランド「TOMOWEL」を起点に、ステークホルダーと共に、未来を創り拓げていく企業でありたい。

左:共同印刷㈱ 代表取締役社長 藤森康彰 右:CSRアジア日本代表 赤羽真紀子さま

共同印刷グループは、持続的な成長のため、社会課題に対して自社が与えるインパクトとリスクの両面を捉え、実行性のある対応に取り組んでいます。本報告書の発行にあたり、多様な業種の多国籍企業においてCSR経営に携わってこられた赤羽 真紀子氏をお迎えし、当グループの取り組みと社会価値の創造について対談を行いました。

業界の抱える課題に立ち向かい、組織と事業を改革

赤羽   真紀子氏CSRアジア 日本代表

赤羽 真紀子さま
CSRアジア 日本代表

赤羽:2017年の事業概況と、業界の抱える課題をどうご覧になり、それらの動向について共同印刷はどのように取り組んできましたか。

藤森:2018年3月期の業績は、売上高950億7千6百万円(前期比0.6%増)、経常利益26億4千4百万円(前期比35.4%減)と、利益面では2001年以降の最高益となった前期と比べ、大きく減益となりました。この一年に限らず、デジタル化、少子化の影響は非常に大きく、紙の減少は加速しています。これを業界最大の課題と念頭に置き、当グループの組織と事業の改革を進めています。たとえば、一般商業印刷の分野では、お客さまの課題を解決するトータルソリューションの提供に注力しています。販促施策と効果を見える化する顧客分析サービスや、デジタルサイネージを活用した販促ソリューション、地方ブランディング事業などを提供し、これまでの受注産業スタイルからの脱却をめざしています。

「TOMOWEL」を"いつものビジネス(Business-as-usual)"に組み込む

藤森 康彰 共同印刷株式会社 代表取締役社長

藤森 康彰
共同印刷株式会社
代表取締役社長

赤羽:小石川(東京都文京区)には古くから大小さまざまな印刷会社が集まっています。けん引する御社は昨年、創業120周年を迎え、「TOMOWEL」という新しいコーポレートブランドを掲げられました。こうしたコーポレートブランドの理念を"Business as usual"に組み込むことは、CSRやSDGs(持続可能な開発目標)を経営に組み込む場合と同様で、非常に大切だと思います。

藤森:印刷産業はAIやIoTといった先進技術の進化とともにさらに変化が加速しています。そうしたなかで、120周年の節目を迎え、社会の変化を的確にとらえた事業変革が不可欠だと感じていました。そこで、「社会において我々が果たすべき役割」とは何かを、社員と共に考え、「TOMOWEL」を生み出しました。「TOMOWEL」にはビジネスパートナー、家族、地域、社会など、関わるすべてと共に良い関係であり、未来を創り拓げていきたい、という想いが込められています。開発段階ではコミュニケーションツールを、開発後はブランド浸透のための映像や印刷物を作成し、セミナーなどの施策も実施しました。2018年からは、マス広告や販促物への展開など、本格的な運用を開始しています。しかし、本当の社内浸透はこれからです。「TOMOWEL WAY」の4つのフィールドやビジョンをしっかり理解し、それを前提に行動していけば素晴らしい仕事ができると信じています。新ブランドの効果で、事業領域の拡大が加速することを期待しています。

赤羽:この地で長く続いている印刷産業もいまやデジタル化やハイテクの時代となり、蓄積したノウハウも非常に幅広い領域に拡がっていますね。「TOMOWEL」に込めた想いを伺い、100年越えの長寿企業が1000年企業をめざして新しい夢を描けるのはとても素敵なことだと感じました。CSRの観点からも、企業のあるべき姿といえるのではないでしょうか。

長く働きがいのある職場を提供し、ASEANに強固な生産基盤を

赤羽:ベトナムで工場を操業されていますね。安全、高品質は日本では当たり前ですが、日本以外では難しいことも多いでしょう。ASEAN諸国でビジネスを展開されるときの課題はどのようなものですか。

藤森:ASEAN市場での受注拡大をめざし、共同印刷ベトナムに加え、2017年にインドネシアのアリス社を子会社化して生産設備や人員を強化しています。ASEAN諸国の人口は増え続けており、経済成長に伴い購買力も高まってきました。さらに、美容健康意識の高まりからトイレタリーは成長市場となり、化粧品向けのラミネートチューブの需要も拡大しています。当グループの工場は、世界でも高く評価される日本品質を追求しており、国内と同様の品質管理体制を構築しています。そのため、現地従業員にとっては非常に高水準のレギュレーションや品質意識が必要となり、定着には苦労が伴います。日本から技術指導者を派遣し、技術はもちろん、日本のモノづくりの精神を伝えています。さらに、長期的な視点で技術者を育成するため、技能実習制度の活用も始めました。そして、最大の課題はジョブホッピングです。せっかく技術を習得した従業員が数年で辞めてしまうのは大きな痛手です。長く働きがいのある環境を提供しようと、職場環境や食事の改善、親睦会や旅行会など従業員の満足度向上に取り組んでいます。

赤羽:定着率の低さは、アジアに進出した多くの企業で課題となっています。ベトナムも含めて、アジア人は家族のつながりが強いので、家族を工場に呼んだり、防災訓練などでコミュニケーションを深めるなど、"家族にとっても良い会社"になることが会社への帰属意識や満足度につながると思います。

多様なパートナーとの協働により、地方の未来を描く「地方創生」

赤羽:偶然ですが、昨年、開山1300年を目前にした鳥取県大山を訪れ、その魅力を満喫しました。東京に本社を置く御社が、地方創生事業のひとつとして「鳥取県西部ブランディングプロジェクト」の旗振りを務めていることは、とても新鮮な驚きでした。

藤森:プロモーションの需要は全国各地にありますので、地域案件ごとに独自のネットワークを構築し、課題解決のメソッドをご提案することで、実績を重ねています。具体的には、当社がコーディネーターとなり、現地に深く入り込んで、関係企業や行政機関などをつないだプロジェクトチームを立ち上げます。ポイントは各団体のノウハウを掛け合わせたひとつのチームとなることです。団体戦にすることで、大きなパフォーマンスを引き出せれば、ブランディングを成功させることができます。

赤羽:プロモーションやメディア、観光、流通などの幅広い分野でノウハウを持つ御社だからこそ、第三者として横串機能を発揮できるのだと思います。これも非常に大きな強みですね。

藤森:地方創生は政府が推進し、自治体の地域ブランド開発ニーズなども高まりを見せています。当社は、人脈や情報が集中する東京に本社を置きながら全国に幅広いネットワークを持っています。共同印刷独自の技術や製品・サービスを生かして、地方の課題解決に貢献しています。

赤羽:地方の未来を創る活動ですよね。まさに100年企業らしい取り組みです。今後もぜひ、日本の各地でもっといろいろな夢を描いていただきたいと期待しています。

藤森:今回、社史を編纂する過程で、当社がこれだけの年月を積み重ねてこられたのは、やはりお客さまに寄り添ってきたからだと感じました。そして、それはこれからも変わらない。同時に、企業が社会と共に持続的に成長するためには、無理があってはいけません。その無理とは何かを改めて考えると、やはりSDGsが提唱する17のゴールに反することなのだと思います。SDGsはすべての国と地域が合意した世界共通の課題です。自社の技術・製品・サービスを活用してこれに取り組むことはビジネスチャンスでもあり、事業の存続と成長につながっていくと考えています。
当グループの企業理念は「印刷事業を核に、生活・文化・情報産業として社会に貢献する」ですが、これからの120年も、この企業理念と「TOMOWEL」の精神のもと、グループの強みを大切にしながら事業領域を拡大し、豊かな未来へ向けて挑戦し続けていきたいと考えています。

赤羽:藤森社長のお話を伺い、あえてCSRを唱えなくても、長期的なビジョンや持続可能な取り組みが共同印刷グループの事業に織り込まれていることがよくわかりました。これからも楽しみにしています。